サッカーファンであれば、一度はこんな疑問を抱いたことがあるはずだ。
「カシマサッカースタジアムは、なぜあんなに人が入るのか?」
茨城県鹿嶋市。東京駅から直通の高速バスで約90〜120分。新幹線は通っておらず、最寄りのローカル線(鹿島臨海鉄道)は本数も少ない。お世辞にも「アクセスが良い」とは言えない、いわば“陸の孤島”である。しかも鹿嶋市の人口は約6万7000人と、J1リーグのホームタウンの中では最小規模だ。
それにもかかわらず、週末の試合日になると全国から数万人ものサポーターが押し寄せ、巨大なスタジアムが深紅に染まる。常勝軍団だから? もちろんそれもある。しかし、強さだけで毎試合これだけの熱狂を生み出し続けることは不可能だ。
その答えは、彼らが体現する「究極の地域密着」にある。サッカークラブが行政、地元企業、そして全国のファンを巻き込み、街の課題をビジネスで解決していく。その結果、「スタジアムにサッカーを観に行く」という行為が、いつしか「鹿嶋という地域に帰る」という感覚へと変わっていくのだ。
移住者や起業家すらも惹きつけてやまない、鹿島アントラーズの規格外のビジネスモデルと熱狂の裏側に迫る。

1. 「鉄の街」のDNAと、スタジアムの日常化
鹿嶋市とアントラーズの結びつきを語る上で、決して外せない土台がある。それが「鉄の街」としての歴史だ。
高度経済成長期に開発された鹿島臨海工業地帯の中核をなすのが、日本製鉄(旧住友金属工業)の東日本製鉄所鹿島地区である。東京ドーム約220個分という広大な敷地を持つ世界最大級の最新鋭製鉄所であり、アントラーズの前身はこの住友金属のサッカー部だ。
重厚長大な産業がもたらす強靭な経済基盤と、「鉄の街」特有の泥臭く、結束力の強い労働者の文化。これがアントラーズの「負けず嫌い」なクラブカラーの根底に流れている。
しかし、工場とサッカーだけでは街は持続しない。クラブは2006年、日本で初めてスタジアムの「指定管理者」となり、巨大なコンクリートの塊を「365日稼働する生活インフラ」に変えた。スタジアム内に最先端のスポーツ医学を提供するクリニックやフィットネスジムを併設し、市民の健康を支える拠点としたのだ。「試合がない日」でも、お年寄りから若者までがスタジアムに集う。この日常の風景こそが、地域密着の第一歩である。

2. クラウドファンディングが変えた「ファンと地域の関係性」
アクセスの悪い鹿嶋市に、全国のファンをどうやって惹きつけ続けるのか。その答えの一つが、「ふるさと納税型クラウドファンディング」という画期的な錬金術だ。
クラブ経営が危機に瀕した2020年のコロナ禍。鹿島アントラーズと鹿嶋市は、いち早くクラウドファンディングサービス「READYFOR」を活用した資金調達に乗り出した。支援者は「ふるさと納税」の制度を使うため、実質的な自己負担は2,000円。それでいて自治体には税収が入り、その資金がクラブのアカデミー(育成組織)のグラウンド整備やスタジアム改修に直接投資される。
この「三方よし」の仕組みは爆発的な支持を集め、2024年度までの5年間で累計約6億1,000万円、延べ約1万人からの支援を集めた。
単にグッズを買うのとはわけが違う。自分の寄付金で、未来のスター候補生たちが練習する芝生が青々と育つのである。遠方に住むファンは、このクラファンを通じて鹿嶋市の「株主」のような感覚を抱く。「俺たちのクラブ、俺たちの街」。この当事者意識こそが、遠いスタジアムへと足を運ばせる強烈なモチベーションとなるのだ。

3. 看板スポンサーからの脱却:「DMO」が創るBtoBの共創エコシステム
スタジアムへの集客と並行して、クラブは地域経済を潤すための広域ビジネスにも着手した。2018年に設立された「アントラーズホームタウンDMO(観光地域づくり法人)」である。
特筆すべきは、鹿嶋市単独ではなく、周辺の神栖市、潮来市、行方市、鉾田市という「鹿行(ろっこう)5市」を巻き込んだ点だ。さらに、地元企業も巻き込み、地域全体を一つの観光エリアとしてパッケージ化した。
トラベルボイスの記事でも語られている通り、このDMOは単なる観光案内所ではない。強力なBtoB(企業間取引)の共創ハブなのだ。例えば、行方市の大規模農園「JAなめがたファーマーズヴィレッジ」と協業し、中国から数十名規模の農業研修生を受け入れるインバウンド企画を実施した。実はこれ、中国で事業展開するアントラーズのパートナー企業からの要望で実現したものだ。
「ユニフォームにロゴを入れるだけの協賛は、もう古い。クラブと共に地域課題を解決し、新しい事業を創りたい」。そんなスポンサー企業のニーズに、クラブとDMOが見事に応えているのである。

4. クラブスタッフ自ら歩いて綴る。公式noteが紡ぐ「愛着」
トップダウンの事業構築の一方で、ファンを「地域のファン」へと変える泥臭い取り組みも行われている。鹿島アントラーズ公式noteで連載されている「#ホームタウンを巡る」という企画だ。
プロのライターではなく、クラブのスタッフ自らが現地を歩き、自らの言葉で鹿行5市の超ローカルな魅力を発信している。
「水郷潮来あやめまつり」の美しい風景、「5月の新茶にぴったりな和スイーツ」、「真夏に行きたい手作りシロップかき氷」。サッカーの戦術でも選手へのインタビューでもなく、ただひたすらに「地元の美味しいもの、美しい場所」を紹介する。
「試合の前後に、あのお店に行ってみようかな」。全国に散らばるサポーターの頭の中には、公式からの温かい発信を通じて「サッカーの熱狂」と「地域の豊かな日常」がセットで刷り込まれていく。デジタルの力とスタッフの熱量が、遠方のファンを地域に継続的にお金を落とす「関係人口」へと育て上げているのだ。

5. メルカリが現場に飛び込む:「サーキュラーエコノミー」の実証実験
そして今、この重工業とサッカーの街に、新たなレイヤーが加わっている。フリマアプリ大手「メルカリ」によるスマートシティ構想だ。
オウンドメディア「mercan」のレポートからも分かるように、メルカリの社員たちは単に東京から指示を出すのではなく、自ら鹿嶋の現場に飛び込んでいる。彼らが持ち込んだのは「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」という概念だ。
スタジアムの廃棄物をリサイクルする仕組みや、駐車場不足と渋滞を解消するための「MaaS(シェアリングエコノミー)」の導入。街全体をテクノロジーの「テストベッド(実証実験の場)」として活用しているのだ。
地元企業とメルカリの社員、そしてクラブが膝を突き合わせてディスカッションを重ねる。このオープンイノベーションの環境は、「新しいビジネスに挑戦したい」と考える起業家やIT人材にとって、垂涎の的である。

6. だから、この街に移住したくなる
「陸の孤島」であるはずの鹿嶋市。しかしその実態は、日本製鉄の強靭なハード基盤の上に、ふるさと納税によるダイナミックな資金還流、DMOによる広域ビジネス、そしてメルカリの最先端テクノロジーが有機的に絡み合う、日本最高峰のビジネスエコシステムだった。
今、この街のポテンシャルに気づいたIT企業やビジネスパーソンの移住・進出が少しずつ始まっている。東京から90分という距離は、週に数回は都心に出社し、残りは鹿嶋で働く「ハイブリッドな働き方」に最適だ。
満員電車から解放され、休日は広大な海でサーフィンを楽しみ、美味しい地元グルメに舌鼓を打つ。そして週末の夕暮れ、深紅に染まったスタジアムで、全国から集まった数万人の「同志」たちと共に、最高峰のサッカーに熱狂する。
なぜ、あんなに駅から遠いスタジアムに人が集まるのか。 それは、アントラーズが「地域のすべて」を背負い、関わるすべての人を「当事者」にしてしまう圧倒的な巻き込み力を持っているからだ。
単なる「サッカーの街」ではない。ビジネスを加速させ、人生を豊かにする最高のフィールドが、ここ鹿嶋には広がっている。
7. 移住への第一歩:鹿嶋市の強力な移住・定住サポート
この記事でお伝えしたような「鹿嶋市」での新しい挑戦や豊かな暮らしを、行政も強力にバックアップしている。鹿嶋市では、移住を検討するビジネスパーソンや子育て世帯に向けて、手厚い支援制度を用意している。
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住まいの支援(最大50万円): 「鹿嶋市空き家バンク」に登録された中古住宅を購入し、移住のために改修を行う場合、費用の3分の2(最大50万円)が補助される「既存ストック利活用補助金」が利用可能。また、45歳未満の人が新築住宅を取得した際の「固定資産税の減免制度」なども用意されている。
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子育て・教育の手厚いサポート: 鹿嶋市ならではのユニークな取り組みが、「新小学1年生へのランドセルの無償支給」だ。さらに、18歳までの子どもを対象とした医療費助成(マル福制度)や、第3子以降の保育料無料化など、家族での移住に優しい環境が整っている。
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ビジネス・創業支援: 市内金融機関と連携した「中小企業事業資金融資」や創業支援事業が整備されており、スマートシティの環境を活かして新たに起業を目指す方へのサポート窓口も充実している。
「スタジアムのある街」での新しいライフスタイルやビジネスに少しでも興味を持ったら、まずは鹿嶋市の公式ホームページや、市役所の「移住相談窓口」をチェックしてみてほしい。
あなたもこの熱狂する街の「当事者」になってみないか。次の挑戦の舞台は、きっとすぐそこに見つかるはずだ。
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